1年半勤めた韓国企業に「お前、いらないから」と言われた話〜韓国にそんなスレギフェサがあるらしい〜

会社の不満や不平
そんなのない人はこの世の中に存在するのでしょうか。

私もそんなありふれた、不平不満を抱いて
会社に勤めてると思ってました。

みんなこれくらいのストレスを抱えてる、
なんならこの会社の中では、ストレスを抱えていない方だ

くらいに。

でもこの会社を退社していく人は、全員1人残らず口を揃えて
「スレギフェサだ」「代表の頭が狂ってる」と言って
出ていくんです。

ネットの匿名レビューには
「おかしな代表と副代表」と
悪口&これでもかという低評価の嵐。

退社するひとだから、今までのストレスが溜まってそんな表現になるんだな、と
大なり小なりそう思わなくもないよな、と

それでもまだ、会社を信じて疑わない私。

旦那も
「会社でこんなこと言ってる人がいた〜」と言ったら
「そんなのどこの会社も一緒だよ、そいつは根性が足らんなあ！」なんて言ったりして
そう思っていました。

文春砲ならぬ
代表砲が
私を襲うまでは。

——

「ちょっと代表室まで来てくれますか」

数日前、面談をすると言ってきたのに
都合が悪くなったのか、気分が乗らなかったのか
ドタキャンしてきた代表からの連絡。

顔見たくないけど、…行くか、と
代表室に向かった私。

「今どんなプロジェクトをやってますか？」

おや、これは
3ヶ月前にクビを宣告された
同僚の時と同じ質問だな…？

「◯◯プロジェクトの翻訳してます。」

「その翻訳、意味ないよ。見る人いない。」

…はい？

びっくりしすぎて、言葉に詰まる私。。。

「そのほかにも、××や△△の翻訳してます。」

「それなんだけど、日本語いらないと思うんだよね。」

はい？？

「杏さんがやってるの今後意味がなくなるし、需要も無くなるから。
いや〜僕もこのままグッバイは違うかなと思って
杏さんがどうしたらこの会社の役に立つ動きができるか考えたんだけど
いい案が思いつかなくて。
1週間時間をあげるから、自分がこの会社にできること探してみてくれない？」(原文ママ)

鈍感な私は、そこでやっと
ああ、順番が来たんだな、と。
これは、退社しろということだな、と。

自分の鈍感さに感謝すべきなのか
あまりの突然すぎる強い攻撃に
心がブロックして感情を失ったのか

は、はあ…と気が抜けた返事をして
代表室を出た私。

こういう時の私は
怒りとかイライラの感情はない。

あぁ…という
言葉にできない虚しさと悲しさが溢れてきて

いつもはここで
涙が溢れて止まらなくなるのに
少しだけ晴れ晴れした自分がいる。

マンネリ化してた会社生活に
いつか辞めなきゃ、逃げなきゃと思ってた
会社生活の区切りをつける
いいタイミングとも思ったのだろうか。

あちらのタイミング(というか気分？)で
それを決められたのは
遺憾の意だけれど。

自席に戻ったら
同僚が心配してカトクを送ってくれて、退勤までの30分を埋めれくれた。
涙が出てきた。

その翌日

リーダーの集まりで
食事をしながら会社の状況について
話し合おうと約束してたんだけど

私が突然代表に呼ばれたもんだから

大体大枠を予想したのか

「今日の夜暇だったら、ご飯を食べにいきましょう」と

チーム長が私を慰めるために
翌日の予定を夜にしてくれた。

ってか、私「代表室に行ってくる」しか言ってないのに
みんな察しすぎでは！！？？？

そう、それほどこの会社では
これが日常茶飯事なのだ。

私は勝手に前から代表のことを
구준표(ク・ジュンピョ)と呼んでいた。
誰かというと
花より団子の
道明寺の韓国語名。

まさに赤紙が
私の元へやってきた。
私は牧野つくしになったのです。

——

夜、チキンを食べながら
代表室で言われたことを話して
みんなで愚痴を言った。
意味のない愚痴なのもわかってるけど
それすらも私の心を癒した。傷ついていたらしい。

そしてすぐ、自他共に認めるソシオパスの
攻略会議に入った。

私の願いは一つ。
「どうなっても良いから、私が傷つかないように退社したい」
どんだけ自分が可愛いんだろう。自分。

でも、私は豆腐メンタルなので
これは自己防衛でもある。
ソシオのような、人を傷つけても何も感じないような人からの攻撃を
まともに受けてしまい
自分が奈落に落ちるのを避けたいからだった。

でもそんな私の願いも、３秒後に儚く散った。
リーダーが言った。

「この会社で円満に退社した人は、1人もいない。」

代表にとって会社に必要ない人、出て行く人は敵であって
傷つけても心が痛くないので
メタメタにやっつけて出て行くらしい。
（というか、現職員でもメタメタにするらしい）

「傷つく前提で、来週の話し合いに臨みなさい」

会社が出すわけでもない
失業保険を出すのも嫌がり
自己都合の退社にしようとしたり
残った有給を換金するのさえ嫌で、使わせてから退社させるとか
そういう細かい嫌がらせをするという噂は前々から聞いていた。

私の目標は「失業保険をもらう」
「傷つく言葉を言われても、理解できなかったことにする」

それがこの攻略会議の結論となった。

——

お前のやってることは
意味がないと言われたので
翌日からは
仕事をしないことにした。

出勤後、
退職金
会社を通してやってた積み立て
失業保険の計算をして

とりあえず
少しの間、餓死しない事を確認して
외국인도 먹고 살아야하니까

銀行の良い金利の通帳を作る事に決めた。

私はお金に無頓着な方なんだけど
こんな事があったら
いやでもお金と向き合う事になり
少し知識を得た。

今すぐ死なないという
お金の心配も減り

ふ〜っと一息ついた所で
この会社への未練はなくなった。

Cレベルが大量退社したり
エンタメ系なので
芸能界かじってる上層部が
一般人とは同じ感覚ではなかったり
미친놈という一言では
到底説明がつかないおかしな会社だった。

そして適当に仕事をすること1週間。

「考えましたか？」

道明寺から、喧嘩の申し込みが来た。

いや私は喧嘩をしないことに決めたんだ。
ソシオVS豆腐メンタルなんて
内容を見なくても、結果は分かりきってるからだ。

喧嘩腰では勝てる見込みがないので
チーム長の助言通り、『突然必要ないといわれて、びっくりしちゃいました』という
『あなたの言葉で私は傷ついた』ということを主張することにした。

そうすると、あっちもごめんな…というスタンスでくるのだとか。

1週間練習したカンペを手に、私は代表室に向かった。
心臓がドクドクした。

さすがに道明寺を目の前に
練習通りにはいかなかったけど
肝心な『あなたを罵って意見しようとする気持ちはない』を
全面に押し出すことには成功したようだ。

道明寺が、『突然思いつきで必要ないと告げたのではない』という長い弁解の後に
「このままでは、会社に残ってもらうことはできない」と
想像もしていなかった丁寧な言葉で、申し訳なさそうに言った。

おや…？？？これはもしかして
ソシオパスの感情をうまく利用して、勝利するのか私？
いや、そんな単純なわけない、ここから失業保険の戦いが始まるんだ。

「・・・ということは、それは会社都合のリストラ…になるんでしょうか？」

「そうだね、失業保険と退職金をもらう手続きをして、退社ということになるね」

「・・・・はあ・・・・（！？）」

「今まで頑張ってくれたのに、本当に申し訳ない」

「・・・いえいえ、こちらこそ今までありがとうございました。」

・・・勝利した。
あっけない勝利だった。
勝利できるとしても、死闘の末
メンタルがボロボロになっての勝利ばかり
想像していたから
こんなあっけなく勝利してしまい、代表室を出る時には笑いが込み上げてきた。

代表室を出てきた私を見て
チームみんなが心配してくれた。
どんだけ傷つけられただろうか、という眼差し。

かすり傷1つつけず、全てを勝ち取った私は
心配してくれるチーム員に申し訳なさすら感じながら
チーム長には話した内容を包み隠さず伝えた。

例外すぎる、と、とても困惑していた。

——

突然2週間後から、ペクス(韓国語でニートの意味)生活になる私
不安と少しの楽しみと未来計画の修正。

リストラされたからといって
人生は終わらない。

少し休んで、日常になってしまった韓国生活を
昔のように楽しむ気持ちを取り戻そうと

思ったより前向きに考えられてて、
自分にとって良い変化なのかもとまで
思えている自分の転換の速さにびっくり。

親・友達に報告したら
「そっちの方が合ってる」とか
「もうそこまで気持ちの整理できてるのすごい」とか
慰めてもらって、傷口に蓋してくれた。

そうそう、2022年末に占い行った占いで
『23年は、仕事が変わります』って
言われたんだった。

全く転職する気がなかったから、「はあ・・・」と聞いてたけど
占いの先生に報告しにいかなくちゃ。

2023年3月
私の韓国生活第3章の幕開け！

——

これは余談なんだけど
私が退社するとチームに報告した日
色々なことがかさなって
チームから計4人が退社することが発表された。
（なんかチームがなくなりそう笑）

私以外も、きっと
たくさん悩んで傷ついたと思うと
心が痛くて、みんなで慰めあった。

この会社以外もいい所はたくさんあるし
というか、人生会社が全てじゃないし
みんな良い方向に行けると良いな。

おわり！

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